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No.28/2014 |
■インスペクター紹介 |
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仁川(韓国)のインスペクター
ジャン・キョン・ウーは、韓国の首都、ソウルに近い仁川港を拠点とするITFインスペクター。2010年にインスペクターに就任する前は、6年間、韓進海運の航海士として商船に乗船していた。
船員時代を振り返ってみると?
良し悪し両方だった。非常に寂しい時もあった。しかし、世界中の国々を訪れることができ、貴重な経験となった。
いつ、インスペクターになる決意をしたか?
一度、ITFインスペクターが自分の船を査察するのを見たことがある。その時は、インスペクターが何をやっているのか知らなかった。しかし、韓国のITFインスペクターに空きがあるのを知った時、インターネットで情報を集め、応募を決めた。
どこに魅力を感じたか?
船員の生活は分かっている。船員がどのように働き、船内でどのように生活し、何を懸念しているのかを知っていれば、この仕事はやりやすいと思った。
他に求められるものは?
船員や仲間と会話するためには、海の知識と同様に英語力も欠かせない。
船員が英語を話せないとき、どうするか?
仁川港には、中国、日本、韓国間のみに就航する小型船が多い。乗組員のほとんど、特に中国人は英語を話さず、学ぼうともしない。だから、ちょっとした中国語を覚えようとしている。西側の船員も乗船していれば、できるだけ上手に英語を話し、彼らの問題をより深く理解しようとしている。
仕事の中で、一番楽しいのは?
乗組員の問題を解決したときは満足感があり、やりがいを感じる。本国に送還された後も連絡をくれる船員もいる。非常に嬉しい。
1回目の訪船は通常、どのような感じか?
舷門の前で、港内用の身分証明書を近くにいる乗組員全員に示す。船長の立ち合いの下、査察を実施した後、通常は乗組員と会うために下に降りて行って、娯楽室、食堂、調理室に立ち寄る。甲板に行くこともある。
乗組員の反応は?
船長あるいは他に誰もいないところで、直接向かい合って話しをする機会を与えられたことに感謝する。そして苦情を訴える。些細な内容である時もあるが、彼らは本当に感謝する。
MLCが発効してから変化はあるか?
韓国は未批准なので、大きな変化はない。本船の旗国が批准していない場合、労働条件に変化はなく、ひどい状態であることが多い。しかし、船社はMLCについて認識しており、賃金遅配や送還などの交渉をする時、MLCを活用する。
典型的な争議は?
未払い賃金をめぐる争議は多々ある。乗組員は荷役を拒むことで抵抗することもある。荷揚げを阻止するためにハッチ・カバーを閉めてしまうのだ。私は彼らを応援する。世界中どこであろうとも、船主と連絡を取る。そして、港湾当局、港湾労組、その他の関係組織に状況を報告する。
争議はどのくらい続くか?
通常、その日のうちに解決させる。乗組員が一日でも荷役を拒めば、会社は料金や損害など失うものが多すぎる。だから、未払い賃金を支払う。通常、12時間あれば十分、我々の力を示すことができる。
ここ3年間、未払い賃金の回収に介入した件数は?
数えきれないくらい。
いつも成功するか?
幸い、今まで失敗したことはない。最終的に賃金を払わせる方法が見つからない場合、本船を競売にかけさせるために、弁護士を雇うのを手助けする。1年、2年と長い年月がかかることもあるが、最終的には、賃金を取り戻すことができる。
乗組員はITFと行動することを常に望むか?
常にというわけではない。船主を信用しようとすることもある。3〜4ヵ月も賃金未払いが続いている場合ですら、いずれ支払われるだろうと信じていることもある。通常、二つのグループに分かれる。一つは船主を信じているグループ、もう一つはもはや信じられなくなっているグループだ。
だれを信じていいのか分からない船員に助言を
賃金は毎月払われるべきだ。もし、2〜3ヵ月も遅配が続いているならば、適切な当局に知らせるべきだ。ITFインスペクターにも連絡して、助けを求めてほしい。
インスペクターの仕事で最も難しいのは?
難しいことはない。この仕事に確信を持っている。インスペクターは皆、何らかの困難を抱えている。船は四六時中、世界中で動いているので、休暇中でも完全に休むことはできない。
オフは何をしていますか?
運動が好きなので泳ぎに行く。英語は毎日勉強している。今は夕方、大学で法律の資格を取るための勉強をしている。
法律の資格を取得しても、インスペクターを続けるか?
もちろん。もっと時間があれば、中国語を勉強したい。中国人船員がたくさんいるので、話が通じなければ助けることはできない。これが次に挑戦すべき大きな課題だ。
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